煙草を休んで5日目。歯ぐきはちゃんと知っていた。


最近、こんなことがありました。

歯磨きはとっても上手で、むし歯もゼロ。定期検診もきちんと来てくださる、優等生な患者さんです。

でも、お口の中を拝見するたびに、ずっと気になっていることがありました。

歯ぐきの色が、くすんでいるんです。

健康な歯ぐきってどんな色かご存知ですか?珊瑚のような、きれいな薄いピンク色をしています。ところがその方の歯ぐきは、なんというか…くすんだ赤紫色。それと、来院されるたびにタバコのにおいがします。そして、もうひとつ。頬の内側の粘膜に、気になる変色がある。

そろそろ、ちゃんとお話しする時だなと思いました。


「煙草と口の中」は、切っても切れない関係

「実は、タバコと歯ぐきって、すごく関係が深いんですよ。」

やんわりとお伝えしました。

タバコを吸っていると、歯ぐきへの血流が悪くなります。これ、歯周病をとっても進みやすくする。そのうえ、タバコには歯ぐきの「炎症を隠す」という困った作用もあって、歯周病がひどくなっていても腫れや出血が出にくいんです。つまり、気づきにくいまま悪化していく。

そして、もっと怖い話を。

タバコは口腔がんのリスクを、吸わない人の約4倍に高めます。

頬の粘膜の変色が気になっていたこともあって、これはお伝えしないわけにはいきませんでした。

「歯周病の専門外来に行くと、治療の前にまず禁煙プログラムをやらされますよ。それくらい、タバコと歯周病は直結してるんです。」と言って重たい話はさらっと終わらせ、歯周病の話で締めました。


タイムリーすぎた、専門家からの一言

その方のリアククションが実直でした。

「えーーーっ!」

普通はね、 「ふ〜ん 禁煙?またその話かい。わかってるんだけどね、もういいんだよ。好きなものやめてまで、歯周病治したいとは思わんよ。」という反応がほとんど。(そうはおっしゃらないけど、心の中で言ってるのが見える。)

なんと、ちょうどその頃、咳が続いていて「タバコ、まずいかなあ…」と思い始めていたところだったそうです。

そこへ歯医者からも同じようなことを言われて、かなりタイムリーなダブルパンチを受けてしまったわけです(ごめんなさいね、でも言わなきゃいけなかったんです)。

かなりショックを受けた様子で帰っていかれました。


次の来院日。歯ぐきが、全然違う顔をしていた。

それから数週間後。その方がいらっしゃいました。

ユニットに座ってもらって、お口の中を拝見して…。

あれ?

歯ぐきが、キレイなんです。くすんだ赤紫じゃなくて、薄くてきれいなピンク色をしている。

「もしかして…タバコ、やめました?」

「なんでわかるんですかーーーっ!!!」

また驚かせてしまいました(笑)。

聞けば、あの日から考えて、タバコを休んで5日目だとのこと。

たった5日です。


歯ぐきは、正直だ。

禁煙すると、血流が回復するのは早いです。歯ぐきへの酸素や栄養の供給が改善されて、色がよくなるのはほんとうにあっという間。

でも逆に言うと、それだけ毎日タバコを吸うたびに、歯ぐきは酸欠状態にさらされているということでもあります。

歯磨きをどんなに頑張っても、タバコを吸い続けている限り、歯ぐきはくすんだままです。ケアと喫煙が毎日、引っ張り合いをしているイメージです。

むし歯ゼロ、歯磨き100点。それだけ頑張っている方です。

タバコさえなければ、もう完璧なんですよ。本当に。


あなたのお口の中も、あなたの生活習慣を全部知っています。

歯ぐきは、正直に教えてくれているんです。

あくまで、「煙草休んでるだけだから、」とはおっしゃってるものの、一生休煙できるといいですね。