最近、こんなことがありました。
歯磨きはとっても上手で、むし歯もゼロ。定期検診もきちんと来てくださる、優等生な患者さんです。
でも、お口の中を拝見するたびに、ずっと気になっていることがありました。
歯ぐきの色が、くすんでいるんです。
健康な歯ぐきってどんな色かご存知ですか?珊瑚のような、きれいな薄いピンク色をしています。ところがその方の歯ぐきは、なんというか…くすんだ赤紫色。それと、来院されるたびにタバコのにおいがします。そして、もうひとつ。頬の内側の粘膜に、気になる変色がある。
そろそろ、ちゃんとお話しする時だなと思いました。
「煙草と口の中」は、切っても切れない関係
「実は、タバコと歯ぐきって、すごく関係が深いんですよ。」
やんわりとお伝えしました。
タバコを吸っていると、歯ぐきへの血流が悪くなります。これ、歯周病をとっても進みやすくする。そのうえ、タバコには歯ぐきの「炎症を隠す」という困った作用もあって、歯周病がひどくなっていても腫れや出血が出にくいんです。つまり、気づきにくいまま悪化していく。
そして、もっと怖い話を。
タバコは口腔がんのリスクを、吸わない人の約4倍に高めます。
頬の粘膜の変色が気になっていたこともあって、これはお伝えしないわけにはいきませんでした。
「歯周病の専門外来に行くと、治療の前にまず禁煙プログラムをやらされますよ。それくらい、タバコと歯周病は直結してるんです。」と言って重たい話はさらっと終わらせ、歯周病の話で締めました。
タイムリーすぎた、専門家からの一言
その方のリアククションが実直でした。
「えーーーっ!」
普通はね、 「ふ〜ん 禁煙?またその話かい。わかってるんだけどね、もういいんだよ。好きなものやめてまで、歯周病治したいとは思わんよ。」という反応がほとんど。(そうはおっしゃらないけど、心の中で言ってるのが見える。)
なんと、ちょうどその頃、咳が続いていて「タバコ、まずいかなあ…」と思い始めていたところだったそうです。
そこへ歯医者からも同じようなことを言われて、かなりタイムリーなダブルパンチを受けてしまったわけです(ごめんなさいね、でも言わなきゃいけなかったんです)。
かなりショックを受けた様子で帰っていかれました。
次の来院日。歯ぐきが、全然違う顔をしていた。
それから数週間後。その方がいらっしゃいました。
ユニットに座ってもらって、お口の中を拝見して…。
あれ?
歯ぐきが、キレイなんです。くすんだ赤紫じゃなくて、薄くてきれいなピンク色をしている。
「もしかして…タバコ、やめました?」
「なんでわかるんですかーーーっ!!!」
また驚かせてしまいました(笑)。
聞けば、あの日から考えて、タバコを休んで5日目だとのこと。
たった5日です。
歯ぐきは、正直だ。
禁煙すると、血流が回復するのは早いです。歯ぐきへの酸素や栄養の供給が改善されて、色がよくなるのはほんとうにあっという間。
でも逆に言うと、それだけ毎日タバコを吸うたびに、歯ぐきは酸欠状態にさらされているということでもあります。
歯磨きをどんなに頑張っても、タバコを吸い続けている限り、歯ぐきはくすんだままです。ケアと喫煙が毎日、引っ張り合いをしているイメージです。
むし歯ゼロ、歯磨き100点。それだけ頑張っている方です。
タバコさえなければ、もう完璧なんですよ。本当に。
あなたのお口の中も、あなたの生活習慣を全部知っています。
歯ぐきは、正直に教えてくれているんです。
あくまで、「煙草休んでるだけだから、」とはおっしゃってるものの、一生休煙できるといいですね。